競馬での人工授精は禁止?
競馬の魅力と言えば血統。
これまで、その血統にたくさんの偉大な競走馬たちが名を連ねてきました。
「ディープインパクト」や「キングカメハメハ」など、種牡馬としても輝かしい実績を残してきた名馬の血が永久に引き継がれてほしい。
そう思う人も少なくありませんよね。
最近では医学も目覚ましい発達を見せているので、人工授精はできないのか疑問に思っている人もいるのではないでしょうか。
種牡馬として日本競馬界を支えてきた「ディープインパクト」も、「キングカメハメハ」も2019年他界してしまいました。
これにより「ディープインパクト」と「キングカメハメハ」の産駒は、2020年生まれの産駒が最後となります。
日本競馬界にとっては大きな出来事であり、今後の競馬のレベルにも影響を与える可能性が高いです。
そんな名馬の血を繋げていくために、「冷凍精子を使えば死後も子供を生産できるのでは」と思ったことがある人もいるかもしれません。
結論から言うと、サラブレッドは人工授精が禁止されています。
これは、日本だけでなく世界共通のルールです。
牛や豚などの繁殖では人工授精が使われていますが、競馬では人工授精は禁止です。
そのため、自然に妊娠し出産するのが、サラブレッドにおける原則となります。
競馬で人工授精が禁止されている6つの理由
競馬では人工授精が禁止されていますが、なぜ禁止されているのか気になりますよね。
名馬の血をどんどん繁栄させるためにも、人工授精は活用するべきだと考えている人もいるかもしれません。
禁止している理由については、国際血統書委員会が公表していました。
そこで、競馬のサラブレッド生産において、人工授精が禁止されている6つの理由についてまとめてみましたので紹介します。
伝統的に自然の妊娠によっての生産
サラブレッドの生産の歴史は古く、1791年以来厳格な血統登録が行われています。
これまで自然の妊娠により生産されていて、それが伝統として引き継がれています。
その伝統を重んじるという意味でも、人工授精は禁止されているのです。
もしも人工授精を取り入れてしまうと、今まで築き上げてきた血統の良さが失われてしまうかもしれません。
自然の妊娠による生産と人工授精とで、昔の競馬との大きな違いが出る可能性もあります。
サラブレッドの生産の基本は、産駒が自然の妊娠により生産されることです。
これが伝統的に引き継がれてきた経緯を考えると、人工授精に踏み切るのは難しいことがわかります。
サラブレッドは日本だけでなく、世界で生産されています。
アメリカ合衆国、オーストラリア、ヨーロッパで数多く生産されていて、世界合計は1年間に約9万頭です。
世界各国で伝統的に自然の妊娠によっての生産されてきました。
これまでの経緯を重んじる意味でも、人工授精は禁止されているようです。
遺伝子的悪影響の可能性がある
国際血統書委員会は人工授精を禁止している理由として、遺伝子的悪影響の可能性も挙げています。
人工授精は自然の妊娠と違って、人の手によって妊娠させます。
人工的に妊娠をさせている以上、遺伝子的悪影響があってもおかしくないと考えているようです。
ただし、これについては豚や牛が既に人工授精により生産されているので、本当に悪影響があるかはわかりません。
ただサラブレッドはより速くすることを求めて、様々な理論のもと生産されてきました。
これまで積み上げてきたものに、何かしらの悪影響を及ぼしてもおかしくはありません。
血統などを細かく考えながら生産されてきたサラブレッドだからこそ、遺伝子的悪影響のことを心配しまうのです。
大事に築き上げられてきた血統に何かしらの悪影響があると大変なので、人工授精の導入は難しいのかもしれませんね。
競馬の魅力に悪影響を及ぼす
人工授精を禁止する理由として、競馬の魅力に悪影響を及ぼす点も指摘されています。
競馬の魅力は血統であり、ブラッドスポーツと呼ばれています。
毎年数多くのサラブレッドが生産者によって配合され、血統には競馬のロマンが詰まっています。
自然の妊娠による生産だからこそ、より競馬が魅力的に感じるのは事実です。
人工的な要素を含んでくると、競馬の持つ魅力が損なわれてしまうかもしれません。
2019年に亡くなった「ディープインパクト」ですが、もしも「人工授精のディープインパクトの仔ばかり」となったときに魅力を感じますか?
「ディープインパクトの仔」であることに変わりはないのですが、人工的なイメージが介入することにより魅力が半減してしまいます。
競馬はこれまで見る人を魅了してきたブラッドスポーツで、代々受け継がれてきた血脈が人気の要因の一つです。
人工授精は、競馬の魅力を損なう可能性があるので禁止されています。
サラブレッド生産者団体が禁止の継続を支持
人工授精については競馬ファンだけでなく、生産者も禁止を支持しています。
国際血統書委員会は、サラブレッド生産者団体が禁止の継続を支持していることも公表しています。
競馬及び生産関係の各団体は、原則的に人工授精に反対の意思を示しているのです。
サラブレッドを生産する側の人たちが反対していることから、人工授精解禁は難しいと言えるかもしれません。
生産者側も、人工授精によって意図していないことが起こるのを恐れているといのが現状です。
人工授精によって、どのような悪影響がもたらさせるのか心配になるのも当然ですよね。
人工授精によって得られるメリットは少なく、生産者にとってはリスクが大きい言えます。
サラブレッドの生産者たちにとって人工授精により悪影響があれば、大きな被害を受けてしまうので深刻な問題です。
人工的な方法で生まれた馬を競走から排除している
人工授精が禁止されているのは、国際的に競馬規程は人工的な方法で生まれた馬を競走から排除していることも理由の一つとして挙げられています。
現在の競馬規程では、人工授精により生産された競走馬はレースに出走することができません。
人工授精を解禁するなら、まずは競馬規程の見直しが必要になってきます。
レースに出走できない現状を考えると、人工授精の解禁はかなり厳しいと言えるかもしれませんね。
国際取引に与える商業的影響が大きい
人工授精が禁止されているのは、産業界全体、特に国際取引に与える商業的影響が大きいのも理由の一つです。
競馬は世界各国で行われていて、海外で購入した馬が日本で出走するということも珍しくありません。
もしも人工授精を解禁すると、国際取引に影響を及ぼしてしまう可能性があります。
人工授精で生産された馬とそうでない馬の差も生まれたり、国によって人工授精で解禁したりと違いもあれば国際取引に混乱を与えかねません。
サラブレッドは各国のセリに海外から参加することも珍しくないので、商業的な面からみても人工授精は難しいと言えます。
まとめ
血統は競馬のロマンです。
血統には過去の名馬が名を連ねていて、見ているだけでワクワクするという方も多いのではないでしょうか。
人工授精をすれば、種牡馬の寿命を気にすることもありません。
2019年には、「ディープインパクト」や「キングカメハメハ」といった名種牡馬が他界してしまいました。
もしも人工授精が解禁されていれば、亡くなった後も産駒を輩出し続けるということが可能です。
名馬の血を残すために「人口授精すればいいのに!」なんて思っている人もいるかもしれませんが、遺伝子的な影響や競馬の魅力を損なうという可能性を考慮すると人工授精解禁は難しいと言えます。
人工授精をしないこその良さもあるので、血統のロマンを体感してください。