競走馬の毛色は8種類。その種類と特徴、遺伝などの豆知識を解説

競走馬 毛色

馬の毛色は、種類によってさまざま。私たちの目には同じに見えるかもしれませんが、実は種類によって違いがあります。

血統書にも記されるため、どの種類に当てはまるのか(個体の識別)を知るためには大切な要素です。

競馬が好きな人でも、競走馬の毛色についてまで詳しいとは限らないので、競馬初心者に質問されても答えられないという人もいるかもしれません。

この記事では、競走馬の毛色の種類とその特徴、代表的な産駒について解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。

競争馬の毛色とは?

競争馬の毛色とは、個体を識別するために必要な要素で、体毛・肌の色・模様のことです。

馬の毛色にはさまざまなパターンがあり、パターンごとに鹿毛、栗毛などのように呼んできた歴史があります。

最初にも書いたように、馬の個体識別には有用な情報となるため、血統を登録するときにはその記載が義務付けられています。

ここでは、馬の毛について説明を行い、競走馬に見られる毛色の種類とその特徴について説明していきましょう。

馬の毛とは?

毛色について説明する前に、毛について説明していきます。

馬の毛というのは2種類。

  • 被毛
  • 長毛

被毛とは、体全体を覆っている毛のことです。

長毛というのは、まえがみ、たてがみ、尾毛の3つのことをいいます。

競走馬の毛色は8種類

公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナルで認められたサラブレッドの毛色は、全部で8種類あります。

競走馬についても、サラブレッドに準じて分類されます。

  • 鹿毛(かげ)
  • 黒鹿毛(くろかげ)
  • 青鹿毛(あおかげ)
  • 青毛(あおげ)
  • 栗毛(くりげ)
  • 栃栗毛(とちくりげ)
  • 芦毛(あしげ)
  • 白毛(しろげ)

8種類の毛色を系統ごとに分けると、全部で4種類。

  • 鹿毛系(鹿毛・黒鹿毛・青鹿毛・青毛)
  • 栗毛系(栗毛・栃栗毛)
  • 芦毛系(芦毛)
  • 白毛系(白毛)

もっとも多い鹿毛形でいうと、鹿毛<黒鹿毛<青鹿毛<青毛の順に黒い毛色になります。

後ほど説明しますが、栗毛は明るい茶褐色系の色が特徴です。栃栗毛は、同じ栗毛系でもやや暗色となります。

鹿毛

鹿毛

鹿毛の被毛は明るい赤褐色から暗い赤褐色まであり、長毛と四肢の下部は黒色なのが特徴です。

栗毛・栃栗毛とよく間違われますが、栗毛系統は長毛と四肢の下部が黒くならないので、そこで見分けます。

代表的な産駒:ディープインパクト、メイショウサムソン、ウォッカ、アパパネなど

黒鹿毛

黒鹿毛

黒鹿毛の被毛は黒みがかった赤褐色なのが特徴で、その程度によって相当黒く見えるものもあります。

しかし、眼の周辺、腋、ひばら、下腹、内股は褐色で、長毛と四肢の下部は鹿毛と同じく黒色なのが特徴です。

代表的な産駒:ナリタブライアン、ヒシアマゾン、エルコンドルパサー、ブエナビスタなど

青鹿毛

青鹿毛

青鹿毛は、全身ほとんどの毛が黒色なのが特徴です。

眼、鼻の周辺、腋、ひばらなどが少しだけ褐色となっています。

代表的な産駒:メジロラモーヌ、マンハッタンカフェなど

青毛

青毛

青毛は被毛、長毛ともに黒色なのが特徴で、軽種馬ではあまり出てこない毛色です。

季節によっては毛の先が褐色になるため、黒鹿毛や青鹿毛と見分けがつきにくくなることもあります。

その場合は、目の周辺や鼻の周辺から区別します。

代表的な産駒:シーザリオ、ヴィルシーナ、ヴィブロス

栗毛

栗毛

栗毛の被毛は、明るい黄褐色なところが特徴です。

長毛は被毛より濃い個体もあれば、白色に近いものまでさまざまあります。

代表的な産駒:マヤノトップガン、タイキシャトル、グラスワンダー、テイエムオペラオーなど

栃栗毛

栃栗毛

栃栗毛の被毛は、栗毛よりも黒みがかった黄褐色から黒味の濃いものまであるのが特徴です。ただし、完全な黒色にはなりません。

長毛については、栗毛と同じく被毛より濃い個体もあれば、白色に近いものまでさまざまあります。

代表的な産駒:サッカーボーイ、サクラローレル、マーベラスサンデー、コイウタなど

芦毛

芦毛

芦毛は、その毛色に大きな特徴があります。

生まれたときは、栗毛、鹿毛、青毛や灰色に近い色をしています。しかし、段々と被毛全体に白色毛が混ざるようになり、年齢が進むにつれて白色の度合いが進むことで純白になっていきます。

いわゆる「白馬」と言われている馬の大半は、年齢が進んだ芦毛です。

代表的な産駒:タマモクロス、オグリキャップ、メジロマックイーン、ビワハヤヒデなど

白毛

白毛

競走馬でも「なかなか出てもない毛色」と言われています。

白毛の特徴は、全身が白色、もしくは大半が白色で生まれることです。よくアルビノ(遺伝子疾患)と間違われますが、眼には色素があること、皮膚の一部にピンク色の反転があるため、違うと考えられます。

芦毛とよく間違われますが、生まれた際に大半が白色なので、そこで見分けます。

代表的な産駒:ユキチャン、ブチコ

競走馬の毛色に関する豆知識

上では、8種類についてそれぞれの特徴を説明していきました。

ここからは、競走馬と毛色に関する豆知識を紹介します。

毛色の出現割合やどうやって毛色が決まるのかを解説するので、ぜひ知識として覚えてください。

毛色の出現割合

あくまでも大まかな割合になりますが、毛色ごとの出現割合は下記のとおりとなります。

  • 鹿毛 50%
  • 黒鹿毛 14%
  • 青鹿毛 3%
  • 青毛 1%以下
  • 栗毛 25%
  • 栃栗毛 1%以下
  • 芦毛 7%
  • 白毛 0.04%以下

一般的にいえば、馬の毛色で多いのは鹿毛ですが、競走馬でももっとも多く、全体の半数が鹿毛になります。

黒鹿毛など他の鹿毛系の毛色種と合わせると、全体の約7割が鹿毛系の計算です。

その次に多いのが栗毛で、だいたい4頭に1頭は栗毛と考えて間違いないでしょう。

一方で少ないのが芦毛系と白毛系です。その他、青毛や栃栗毛もめったに出現しない毛色となります。

競走馬の毛色はどうやって決まる?

馬の親子

競走馬の毛色は、遺伝法則(いわゆるメンデルの法則)によって決まります。

そのため、配合相手によって大きく変わります。

ちなみに競走馬の遺伝子における優性順位は、下記のとおりとなります。

白毛→芦毛→鹿毛・黒鹿毛→青鹿毛→青毛→栗毛→栃栗毛

【※左から順番に優性。】

白毛は非常にレアな毛色ですが、遺伝子の優性順位でいうと一番上です。

そのため、両親のいずれかが白毛であれば50%の確率で生まれてくる仔は白毛となります。

その次に優性な芦毛についても同じく、両親のいずれかが芦毛であれば50%の確率で芦毛です。

両親ともに栗毛・栃栗毛の場合は、栗毛しか生まれません。

競走馬の中で、もっとも有名な馬のひとつにディープインパクトがあります。この馬は鹿毛の代表産駒ですが、鹿毛のホモ遺伝子を持っています。そのため、栗毛の産駒がいないことで有名です。

毛色は競争能力と関係ない

競馬 芝

競馬が好きで良く馬券を購入される人の中で、疑問に思うことが多い項目はやはりこれではないでしょうか。

「毛色と競争能力に関係はあるの?」

毛色を決定するのは、染色体の種類です。この染色体には、「競争能力に影響のある遺伝因子はない」とされています。

よって、毛色は競争能力に関係はありません

ただ、これは活躍した種牝馬による部分も大きいようです。

例えば、先に例として挙げたディープインパクトは、鹿毛のホモ遺伝子を持っています。こういったホモ遺伝子を持っている牝馬から種づけされた馬が多い場合、どうしても優性でない栗毛・栃栗毛が少なくなりやすいようです。

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まとめ

この記事では、競走馬で見られる毛色の種類と毛色に関する豆知識について紹介しました。

毛色は競争能力とは無関係で、予想にはほとんど影響のない部分のため、競馬が好きな人でもよくわからないという人が多い部分です。

しかし、はじめて競馬をする人に聞かれた時に答えられなかったら、「本当に知っているのかな?」と思われるかもしれません。

この記事を読んで、ぜひ競走馬と毛色に関する知識をおさらいしておきましょう。

この記事の監修者
後藤孝男
後藤孝男(ごとう・たかお)
大学卒業後、東京タイムズ社に入社。中央競馬担当記者となり全国の競馬場を初め美浦、栗東トレセンなどへ赴き、取材に、予想にと活躍。同紙休刊後は、実績を買われて競馬専門紙「馬三郎」に創刊メンバーとして参画、一昨年からは美浦トレセン北馬場時計班として毎週、サラブレッド達の調教に目を凝らす。
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