セン馬とは
出馬表には「牡馬」「牝馬」の表記がされていますが、もう一つ「セン馬」があるのを知っていますか?
初めて見る人は、「セン馬」が何のことかわかりませんよね。
「セン馬」とは、去勢手術をした牡馬のことです。
競馬界では気性を穏やかにして、レースで力を発揮できるようにするために去勢が行われることがあります。
去勢し「セン馬」となると、もちろん種牡馬になることはできません。
ただし、種牡馬になれるのはほんの一握りの競走馬であり、種牡馬選定期間が過ぎた4歳以上の牡馬はほとんどの国で去勢されるのが一般的となっています。
今回の記事では「セン馬」について、メリットや過去の活躍事例などを紹介します。
「セン馬」への知識を深めて、競馬予想にも役立ててくださいね。
セン馬のメリット
「セン馬」は気性が悪い馬が大人しくなり、レースで扱いやすくなるというメリットがあります。
実力があるのにレースに集中できていない馬は、「セン馬」となって化けることがある点に注目です。
また、レースで扱いやすくなるということは、調教でも扱いやすくなるということです。
調教での調整もやりやすくなるので、馬体重や調子の管理も簡単になるというメリットもあります。
さらには、発情によってレースに集中できないことも避けられます。
パドックなどで牝馬に発情してしまい大敗してしまう人気馬もいますが、そういったリスクを回避できるのも良い点です。
気性が悪いということは、競走馬にとって致命的な弱点です。
その弱点を補うために、調教師は様々な工夫をしています。
あらゆる努力を尽くしても、気性が改善されない悪癖がある馬もいます。
そういった馬に最終手段としておこなれるのが、去勢です。
去勢により大人しくなることでレースに勝てる可能性があるので、どうしても実力が発揮できない馬は去勢をしてみる価値がありますね。
セン馬のデメリット
「セン馬」になることに対してのデメリットも存在します。
現在の日本競馬において、「セン馬」はクラシック競走に出走することができません。
なぜなら、クラシック競走は優秀な種牡馬や繁殖牝馬の選定競走として定められているからです。
そのため、「セン馬」になることでクラシックに出走できないというデメリットあります。
また、「セン馬」が大活躍したときにもデメリットが生じます。
G1を勝って本来なら種牡馬になれるはずの活躍でも、「セン馬」は種牡馬になれないので子孫を残せません。
競走能力の高い馬の遺伝子を残せないのが、「セン馬」のデメリットでもあります。
他にも、気性が穏やかになりすぎて、闘争心を失うというケースも見られます。
気性が悪い馬はそれだけ闘争心も強く紙一重な部分があるので、良さが失われてしまう可能性があるのもデメリットです。
そのため、日本競馬では慎重に去勢をするのかが判断されています。
セン馬として活躍した3頭
実際にどのような馬が、「セン馬」としてレースに走っていたのか気になりますよね。
過去にいた「セン馬」の成績を知りたいという人も多いかもしれません。
そこで、過去に「セン馬」として活躍した名馬たちを紹介します。
レガシーワールド
日本調教の「セン馬」として初めてG1を勝利したのが、「レガシーワールド」です。
「レガシーワールド」は、1993年にジャパンカップを制しました。
初めてのG1勝利がジャパンカップであったという点は驚きですよね。
「レガシーワールド」はデビュー前からその素質の見抜かれ、調教師からも「この馬は走る」と高く評価されていました。
しかし、すぐに人や馬を威嚇したり、人間の指示を素直に聞かないなど気難しい面がありました。
このままでは才能が開花する前に終わってしまう可能性が高いと考え、去勢手術が行われたのです。
去勢後、「レガシーワールド」は才能を一気に開花させました。
菊花賞の前哨戦であるセントライト記念で勝利し、「セン馬」のため菊花賞には出走できませんでしたが圧倒的な存在感を示しました。
そして、古馬になりジャパンカップで、「コタシャーン」など海外の名馬を退けて見事1着になります。
これが日本調教の「セン馬」の初G1勝利となり、「セン馬」でも一線級が活躍できることを証明しました。
マーベラスクラウン
次に紹介する「セン馬」の名馬が、「マーベラスクラウン」です。
「マーベラスクラウン」は、「レガシーワールド」と同様に「セン馬」としてジャパンカップを制しました。
「セン馬」によりG1制覇は「レガシーワールド」に次ぎ2頭目となり、「セン馬」のG1馬として有名な一頭です。
「マーベラスクラウン」も気性が荒く、調教中に南井克巳騎手を振り落とすなど危険な行動をしていました。
気性が原因で実力が発揮できないと考えられ、去勢されることとなります。
去勢後は前とは別馬のように大人しくなり、条件戦を3連勝して素質を開花させます。
1994年にはジャパンカップを制し、前年の「レガシーワールド」に続く2年連続で「セン馬」が勝利したため話題となりました。
その後の活躍も期待されましたが、故障により思うような成績が残せていません。
それでも、「セン馬」による2年連続勝利は印象的であり、記憶に残る名馬の一頭です。
サイレントウィットネス
日本競馬では去勢は最終手段として行われますが、海外ではデビュー前に去勢を行うのが一般的です。
その中でも、特に「セン馬」が多いことで有名なのが香港競馬です。
香港では馬産が行われていないため、牡馬の競走馬のほぼすべてが「セン馬」になっています。
そんな香港競馬の中でも有名な名馬の一頭が「サイレントウィットネス」。
「サイレントウィットネス」は、デビューからチャンピオンズマイルで負けるまでの間に17連勝した記録を持っています。
日本競馬への遠征をしたことでも知られる馬で、2005年のスプリンターズSを制しました。
海外でも結果を出せるのは、それだけ実力が飛び抜けている証拠です。
「セン馬」は国によってはむしろ一般的なところもあるので、世界的に見ると「セン馬」の活躍は珍しくありません。
「セン馬だから弱い」といったことはなく、それは世界で証明されています。
競馬予想でのセン馬のポイント
馬券を買う際には、「セン馬」で押さえておきたいポイントがあります。
それは、去勢明け初戦は馬体重が大きく減るので好走が難しいという点です。
去勢をすることによりホルモンバランスも乱れて、馬体重は大きく減少しています。
本来の実力が初戦では発揮できないことが多いので、術後の初戦での過信は禁物です。
また、術後初戦に力を発揮できないのは、休養明けである点も理由の一つとして挙げられます。
休み明けでレースが久々なため凡走をしてしまうことがあるので、去勢後の初戦は割り引く必要があります。
もしも出走馬の中に「セン馬」がいるときには、去勢後の初戦であるかは必ずチェックするようにしてくださいね。
まとめ
「セン馬」とは、去勢手術をした牡馬のことです。
日本競馬においては、一般的に気性が悪い馬への最終手段として行われています。
「セン馬」は気性が穏やかになり、レースや調教で扱いやすいというメリットがあります。
ただし、現在のところ、日本競馬において「セン馬」はクラシック競走に出走できません。
「セン馬」がクラシック競走に出走できないのは、クラシックが優秀な種牡馬や繁殖牝馬の選定競走として位置づけられているからです。
日本では最終手段として行われる去勢ですが、海外ではデビュー前にほとんどの牡馬の去勢をするという国も珍しくありません。
去勢をすることによって馬の気性が穏やかになるので、レースをより安全に行うという狙いがあるようです。
競馬予想の観点から見たときに、術後初戦は馬体重が大きく減少するので割り引きするというのが定説です。
術後初戦かどうかは必ず確認するようにして、「セン馬」として安定した時期に馬券を買うようにしてくださいね。